一〇二 關防(二八)

○一〇二 關防(二八)  〻浮妄反、訓布世久フセグ
慧苑に浮亡反とある、私記には反字無し、今慧苑により補ふ。二十七卷九二に擁字をフサグと訓んで居るがフサグとフセグとは似て居るが異る。この防字にあたる國語は妙に種類が多い。此の私記はフセグであるが、地藏十輪經元慶點に防字をホサグと訓み、法華文句には、ホソク也、保曾(ク)、東大寺諷誦文稿にフセキ、前田家本仁徳紀十一年に將防ホソカムトシとある。ホソガムは四段活だが、小泉策太郎氏藏玄奘表啓にホソクルとあるを見ると二段活用でもあつたのだらうか。長寛元年移點石山寺大唐西域記にもホサクとある。ホサグ・ホソグは珍しいが、點本に現はれるのだから特殊扱すべきだらう。和名抄の射藝具に射乏を夜布世岐と註して居る。防矢の義である。