2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

二 師輔傳の夢物語

師輔傳に 「大かた此の九條殿いとたゞ人におはしまさぬにや。思し召しよる行末の事なども、かなはぬは無くぞ、おはしましける。口惜しかりける事は、いまだいと若くおはしましける時、『夢に朱雀門の前に、左右の足を西東の大宮にさしやりて、北向きにて内裏…

一 業平中將と王侍從との相撲

われ〳〵が大鏡を讀む時には、たゞ何氣無く獨りで讀む時も、教科書として教室で解釋する時でも、概して、事實の穿鑿には觸れないのが普通であるやうであり、たゞ本書の成立年代の考察を試みる時のみ、其の考察に役立ちさうな事項の考察に努力する位の事であ…

大鏡雜考二條

岡田希雄 國語・國文 5(2): 86-91 (1935)

「國語學講習録」に就いて

新刊紹介 岡田希雄 國語・國文 4(7): 89-91 (1934) 昨年〈昭和八年〉の七月二十六日から二十九日へかけての四日間、長野縣松本市で、松本女子師範學校を會場として、信濃教育會東筑摩部會主催の國語學講習會が開催せられ、柳田國男氏、新村出、小倉進平兩博…

近世狂歌史  菅竹浦氏著

江戸時代の文藝として最も多くの鑑賞家と創作家とを持つて居たものは、何といつても俳諧と狂歌とであらう。しかも俳諧は芭蕉を得蕪村を得て、藝術的に高い水準にまで達したのに反し、狂歌は遂に言語遊戲として終始した。今日狂歌が人々から殆ど顧みられなく…

前田侯爵家本三寶繪 池田龜鑑氏解説

源爲憲が冷泉院の女二宮尊子内親王の御爲めに、永觀二年十一月に物して献上した三寶繪また三寶繪詞には、三種の本文が傳存して居る。自ら眼福を得たのでは無いが、諸家の記されたのにより列記すると、其の一は前田侯爵家所藏本にして、寛喜二年庚寅三月十九…

眞福寺善本目録  黒板勝美博士編

名古屋市の眞福寺が内外典國書の古鈔本・古刊本・孤本□の□を夥しく所藏する事に於いて、海内屈指の名刹であるのは、今更らしく云ふまでも無い。「國寶に指定せられたるもの二十八點、又當に國寶に指定せらるべく、もしくは國寶に準ずべきもの殆ど一百點に及…

安田家本假名書論語  安田文庫内 川瀬一馬氏編

假名書論語と云ふのは、單に論語を漢字交り文に延書したと云ふ位のものでは無くて、漢字は殆んど入れない主義で、全部を假名で書いたものを云ふ。斯う云ふ假名書のものは、今日では到底作られさうにも無いけれど、古くは、假名書化する程度には相異があるけ…

柿堂存稿  岡井愼吾博士著

柿堂と云ふは小學の大家文學博士岡井愼吾先生の號である。博士は福井縣の人、明治二十六年四月小學校本科准教員の免状を得て小學校に奉職せられて以來、滿四年後には、「亂脈」を極めて教壇も立つて居ない福井中學校に於ける一年の受難を經て、伊豫の西條、…

新刊紹介

岡田希雄 潁原退藏 國語・國文 6(2): 113-121 (1936)

以上で自分は「玉篇の研究」に就き單に紹介――批判では無い――したので必るが、其れに因み、非禮ではあるが、斯くあらまほしかりきと感ずる事に就いてなほ一言したい。そは、要するに博士の記述は老婆心に缺けて居る傾きがあると云ふ事である。これは本書が學…

先づ内容を云ふと、「玉篇の研究前篇」は(一)玉篇考正篇五章、(二)玉篇考續篇七章より成り、「玉篇の研究後篇」は(一)玉篇逸文内篇と(二)同外篇とより成り、最後に索引として(1)「前篇にて論及せし文字及び重要なる事項の索引」(2)「玉篇逸文索引(…

岡井博士の大著「玉篇の研究」

新刊紹介 岡田希雄 國語・國文 4(5): 90-103 (1934) 漢字の辭書としては、形類、音類、義類の三種類が存するのだが、其の中で形類に屬するもの、即ち所謂部首分類式辭書〈字書と書くの正しいのだが、辭書ですましておく〉としては説文以後如何なるものが出來…