2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

五 賢首の新譯華嚴經音義

賢首の新譯華嚴經音義の事は、前の新譯華嚴經音義私記解説に於いては、極めて簡略に記したに過ぎないが、今やゝ詳しく書いて見る。さて此の音義の事は、新羅の翰林學士崔致遠が、天復四年春(我が延喜四年に當る、賢首歿後百九十二年目)に書いた賢首大師傳…

四 字音假名索引

音義私記使用の一字一音の假名のみを擧げ(一字二音の音假名は無く字訓假名と見る可きものも無い)それの使用せられて居る語の番號を記した。但し五十四の「去末爲耳」は意味不明だから省略し、また大治本の用字も全部除いた。濁音假名は確かなものだけを濁…

三、倭訓索引

右に箋註した新譯華嚴經音義私記所見の倭訓、及び大治本八十經音義所見の倭訓の五十音索引である。假名書のは片假名に改め、下に其の訓に相當する漢字を附し、心刺・大神の類は其のまゝで擧げた。語は或る可く分析的にし、ヒトニギリはニギリにも擧げると云…

一七〇 猫狸(七八)

○一七〇 猫狸(七八) 上又作㆓貓字㆒、亡胡亡包二反、下力甚反、猫捕鼠也、眉也、ニ又漢云野貍、倭言上尼古{ネコ}、下多〻既{タタケ} 慧苑に無し。經文〈三八一ウ上一一〉に善男子譬如㆓猫狸㆒とある。ネコは興福寺本靈異記第卅話に「狸禰己」、新撰字…

一六九 樂絃(七八)

○一六九 樂絃(七八) 又作㆓弦字㆒、奚堅反、所㆔以張㆓弓弩等㆒、倭言都留{ツル}、又乎{ヲ} 慧苑に無し、經文〈三八〇オ下四〉に法樂絃とある。ツルの語は、國語辭典は保元、長門本平家、太平記を引いて居るに過ぎない。しかしユミツルは和名抄に見え…

一六八 罥索(七八)

○一六八 罥索(七八) 上‥‥古犬反、罥係取也、倭言上和那{ワナ} 省略の所は字體に關する六字を省いたのである。慧苑に無し。ワナは記紀の宇陀の高城の條の神武御製に、宇陀能多加紀爾、志藝和奈波留とある。

一六七 鉗鑷(七八)

○一六七鉗鑷(七八) 上宜作鈷字、奇沾反、鈷持也、取㆑物者也、鍛具曰鈷鉗類也、鉗以㆑鐵有㆑所㆓結束㆒也、倭言多波都〻{タハツツ}、下女×反、車綦也、倭言鼻毛艾利{ハナゲカリ}(×は犬篇に葛) 慧苑にもあり、私記は慧苑による。經文〈三七八オ上尾四…

一六六 利鋸(七八)

○一六六 利鋸(七八) 居庶反、截㆑物者也、故經云、齒如㆓鐵鋸㆒、倭言乃富岐利{ノホキリ} 慧苑にも私記にも無い。經文〈三七八オ上一三〉に菩提心猶如㆓利鋸㆒とある。富はホだからノホキリである。新撰字鏡には乃保支利の訓が天治本だけでも七つも見え…