一二九 捕獵放牧(六〇)

○一二九 捕獵放牧(六〇)  〻莫六反、食也、×〈旁は卜/篇は食〉也、捕取㆑魚也、獵力渉反、訓等何利須ガリ
慧苑にあるが關係は無いやうだ。×は旁を人にした字と同じ。私記は捕字を大字に書いて居るが其れは非、小字である可きだ。トガリスは萬葉集十七に「雨ノ降ル日ヲ等我利須ト」「カムシダノ殿ノ中チシ登我利須ラシモ」とあり、鳥獵・鷹田・始鷹獵をトガリ・ハツトガリと訓んで居る。トガリはトリガリ(鳥狩)の義で、トの假名正しい、リが消えた形だが、其の變化は狹い母韻を伴ふラ行音節の單なる脱落であらう。記の登美〈ナガスネ彦の據地〉を紀は鳥見と書き、常陸風土記筑波郡の謄波江は萬葉集に鳥波能淡海とあり、其の萬葉は鳥屋をアマトヤ見ラムと云ふ風にトヤの助辭に借り〈三例あり〉トグラ(塒)は萬葉集〈假名書では無いがトリクラとは訓めない〉や和名抄に見え、和名抄には、鳥羽(度波)、鳥取(止止利)鳥栖(止須)と云ふやうな地名も見える。