六月十三月に、太田全齋の諺苑を見せて頂くため、藤井乙男先生の御宅へ參上したところ、先生は近頃、伊賀の沖森書店の目録により購入せられた由の圓選詞林と云ふ二册の美濃型寫本をお見せ下さつた。一種の辭書であり、奧書によると、尊圓法親王の御撰であるから圓選詞林と名づけたものらしい。落丁もあるらしいが尊圓御撰とすると、時代も古く、色葉辭書としては珍しいものであるから、精しく査ベたくて、先生の御好意に甘えてお借りして歸つたが、和田英松博士の皇室御撰之研究を見て、やはり尊圓御撰であり、拾霞抄と云ふのが本名である事を確め得た。とにかく珍しいものであるからこゝに紹介する次第である。(諺苑に關する藤井先生の御解説は日文文化十四に見える)