一〇

最後に、おなにいの同義語を、參考までに左に掲げる。

  • ○五人組 類語大辭典に見ゆるもの。
  • ○手篇 寶永七庚寅年新板の八文字屋本寛濶平家物語卷四の「貧福さま〴〵の働」の條に見えて居る。近世文藝叢書本に詞は無いが、原本では恐らくはテヘンと訓んで居るだらうと思はれる。
  • ○夢つるみ 大言海カハツルミの條に、カハツルミの同義語として「夢つるみト云フ語モアリ」と云つて居る。但しこれは或ひは艶夢の事にて別の事か。
  • ○きせはぎ 閑田次筆二の七一二頁。
  • ○あてがき 松屋筆記に當挊の二字をあてて居る、但しこれは滑稽詩文の用字である由。

何れも國語辭典には採録せられて居ない。又其の語義も割りかねるのが多い。

さて斯う云ふ語は、隱語辭典や方言書類に、種類の異つたものゝ存する事が想像せられるが、自分は、其れらを調査する暇を持たぬ。大方の高教を仰ぐ次第である。(昭和八年二月二十三日稿)

此の文につき高教を賜はる場合には、京都帝國大學醫學部解剖學教室飯田勇一郎氏に宛てゝ願ひます。

(セスリの古形がセツリであると云ふ自分の推定は、兒草子により確證を得たから、既でに追攷を書いて投稿して置いた。犬筑波の事も訂正しておいた。四月一日校正の時に記す。)