一 苞括(序)

○一 苞括(序)  (四十四字略)×又裹同、倭言都〻牟ツツム(下略六字)〈×は果の下に衣を書いた字〉
苞括は慧苑の音義には見えぬ。其の苞字を説明して×也と註し、さて其の×字について、ツツムと訓ずる由を云つて居るのである。萬葉集に×字をツヽムと訓んで居る例は珍しく無い、ツツムと云ふ語の假名書例も都々美氐夜良婆、都追美氐夜良牟などとあり、常陸風土記白鳥里の條にも都都牟、靈異記興福寺本第二十四話にも津〻三ツツミとある。さて漢語に國語を註記する場合に「倭言」と斷る事は大般若經要集抄、石山寺藏大般若經音義中卷、日本感靈録などに見え珍しく無い。