七六 圈揣(二三)
- ○七六 圈揣(二三) 〻正爲㆑摶、又爲㆑×〈妙な字であるが專を篇とし刂を旁とした字が正しい〉徒官反、團音端、訓
麻呂加須 、又爲〈○こゝ脱文あらう〉 - 慧苑に無いのみで無く、經文の一一五頁裏下段の邊には斯う云ふ熟字も見當らない。ところが此の私記二十四卷に
「一摶一粒 摶又爲×〈車篇に立刀が書いてあるが、これも專に立刀が正しい〉同、徒官反團也△〈活字に無い字形だが圜が正しい、マロガス〉也、倭言比刀二岐里」
と云ふのがあり、二十五卷には「揣食 上字正宜㆑作㆑摶、〻又爲㆑×〈これも專に立刀が正し〉同徒官反、團也、團音端、訓摶也、揣字乃揣量之字也」
〈これは慧苑にも見ゆ〉とある。何れも同じやうな註である。二十三卷のは他の二例と比べるに團の下に也字が必要であるやうだ。マロカスは清濁不明だが、マロから出た動詞、マロメル、握リマロメテヒトカタマリノモノトスルの義、だから二十四卷のには一摶に一握 の訓がある譯である。マロカス
や其の名詞形マロカシ
は名義抄に見え、世尊寺字鏡も團字をマロカス
と訓んで居る。マロは萬葉集に丸宿
・丸寐
・丸寢
・末呂宿
とあり、繼體皇子
、敏達紀の丸高王 麻呂古皇子
は〈記も同〉同名であらうから、マロのロは乙類の呂で可からう。但しロの假名は、本書では呂單用だから問題に成らぬかも知れぬ。