一二一 壍(五九)

○一二一 ×(五九)  美序ミゾ(×は塹に三水あるもの)
慧苑に無し。ミゾの語は記紀須佐之男命の暴状の條に溝又は渠を埋める事を書き、又、神武皇后の御祖父として三嶋湟咋ミゾクヒ、三嶋溝橛の名があるが、假名書は無い。萬葉集にも儲溝マケミゾとあるに過ぎない。古語拾遺に美曾宇美、四分律古點に見曾乎止呆左ム〈ムは補讀〉とある。ミゾの語、語原不明だがミは水の義とすれば美で正しい。ゾは不詳。但し六十九卷一六二にも美序とあり一致するから、ゾで可いかも知れぬ、乙類である。因みに此の音義私記第廿七卷の首の所に、上音計、訓髮也、髮如㆓美序㆒とあるが、こゝは標出語が落ちて居るらしい、其の標出語は上音計とあるから多分「髻某」であらしいが、判りかねる。但しそれよりも問題と成るのは此の美序であり、假名書か何うかも判らぬらしいが、髮如㆓美序㆒では全く何の事か理解できない。