一三八 誘誨(六五)

○一三八 誘誨(六五)  上音畏、訓古之良布コシラフ、下音化、訓教也
慧苑に無し。畏はヰであるのに、誘(イウ又はユ)の音を畏で示して居るのはいぶかしい。悔音化はクヱである。コシラフの語は地藏十輪經元慶點に誘誑をコシラヘタホロカシ、東大寺諷誦文稿に「コシラヘテ」新撰字鏡〈三ノ七ウ八〉にも言篇に耳を旁とした字を誘也と漢文で註し古志良不と假名訓を施して居る。コの假名の當否は判らない。コシラが同一結合單位内の音節であるか何うかも判りかねるから、有坂氏の音節結合の法則の第三則をあてはめるのが妥當であるとも云へないやうである。