一五一 蚊蟻(六六)

○一五一 蚊蟻(六六)  上、下音疑、訓安利乃古アリノコ
慧苑に無し。カは三十五卷一〇九にはカアと長呼の形で見える。蟻は萬葉集に、安利我欲比、有我欲比を蟻通アリガヨヒ、蟻往來と書き、安里伎奴能を蟻衣之と書き、アリの假名に使用する例珍しく無い。新撰字鏡や和名抄には無論見えるが、アリノコの語は見えない。是れは猫ノ子などと云ふのと異り、コマ(駒)ヰノコ(豕)同樣に、アリ其のものを指すのであるから、コは愛稱であるかも知れぬ。しかし意味は無諭子であらう、子とすれば古の假名で可い。柳田國男氏の蝸牛考〈三頁〉に方言でアリゴ・アリンボと云ふ由であるが、其のアリゴは此のアリノコ式の名であらう。