一六九 樂絃(七八)

○一六九 樂絃(七八)  又作㆓弦字㆒、奚堅反、所㆔以張㆓弓弩等㆒、倭言都留ツル、又
慧苑に無し、經文〈三八〇オ下四〉に法樂絃とある。ツルの語は、國語辭典は保元、長門本平家、太平記を引いて居るに過ぎない。しかしユミツルは和名抄に見え、ユヅルの語は記の忍熊王事件の條に、豫め準備して置いた設弦を宇佐由豆留と訓じて居るのである。ツルの用例として保元などを引くは語史的には無意味である。此の種の擧例は妥當で無い。ヲは總て紐状のものを云ふのであり(と同語であらう)記の八千矛神の歌に大刀ガモイマダ解カズテとあるが、弦の事は萬葉集に、梓弓都良絃取リハケ引ク人ノの都良絃をツラヲと訓んで居る、ツラはツルである。