2008-04-04 一六九 樂絃(七八) 新譯華嚴經音義私記倭訓攷 箋註 ○一六九 樂絃(七八) 又作㆓弦字㆒、奚堅反、所㆔以張㆓弓弩等㆒、倭言都留{ツル}、又乎{ヲ} 慧苑に無し、經文〈三八〇オ下四〉に法樂絃とある。ツルの語は、國語辭典は保元、長門本平家、太平記を引いて居るに過ぎない。しかしユミツルは和名抄に見え、ユヅルの語は記の忍熊王事件の條に、豫め準備して置いた設弦を宇佐由豆留と訓じて居るのである。ツルの用例として保元などを引くは語史的には無意味である。此の種の擧例は妥當で無い。ヲは總て紐状のものを云ふのであり(麻{ヲ}と同語であらう)記の八千矛神の歌に大刀ガ遠{ヲ}モイマダ解カズテとあるが、弦の事は萬葉集に、梓弓都良絃取リハケ引ク人ノの都良絃をツラヲと訓んで居る、ツラはツルである。