本書の正しい名は拾霞抄であると云ふ、其れが圓選詞林と變じたのであるが、さう變へたのが尊朝であらせられたか、又は其の後の轉寫者であつたかは今の所では判らない。拾霞抄と云ふ定つた名のあるものを後人が勝手に改めると云ふ事は考へられないから、表紙に貼付してあつた題箋が失はれ、内題も無くて書名が不明と成つてしまつたから、しかた無く後人が圓選詞林と云ふ名に變更したのであると考へられる。
しかして圓選詞林二册本に於いて裏册の卷首が脱落したのは、尊朝が一册に寫されたものを、轉寫者が勝手に分册したからである事は云ふまでも無い。しかも其の後また百首題の所などに脱落が生じたものらしい。