四五 被甲(一五)

○四五 被甲(一五)  上加也、云㆑加㆓於身㆒也、甲、可夫刀カブト
慧苑にも被字の解があり、廣雅曰、被加也、謂㆑加㆓之於身㆒也とあるが、甲の説明は無い。さて我が國では、甲字を頭に被るカブトに訓ずるのが普通であるが、其れは誤用であり、甲は胴體につけるヨロヒの義である。斯う云ふ誤用が何時より生じたかは判らぬが、此の華嚴音義私記により、奈良朝期に於いて既でに誤用して居た事が判る。カブトの語は、新撰字鏡に見える。が古例は無い。此の音義私記になほ二つ二十三卷六十九卷とに甲字を可夫止可夫度と讀んで居る。刀度は甲類の字だが止は乙類の字であり、一致せない。甲類が正しきか。