四七 數其滴(一五)

○四七 數其滴(一五)  古經爲㆓渧字㆒滴音宅、訓都飛ツビ、摩×天芋知㆓雨數㆒也
×は酉篇に㐬皿を合せた字を旁とした字でマケイ首羅のケイ字だが、音義私記では酉篇に旨を旁とした字に作つて居る。こゝは、大海龍王が雨を降らしむる時、マケイ首羅は智自在にして、悉能く分別して、其の雨滴の數を計ヘ知ると云ふのである。芋字は若しくは子字の誤か。さてツビの語は下にも〈米都非〉〈米都飛〉の二例があり、靈異記興福寺本序「粒〈川比/乎〉和名抄「粒〈伊奈/豆比〉類聚名義抄三卷本色葉字類抄節用文字字鏡集等も亦ツビだが室町期の塵芥温故知新書長享本和玉篇永祿五年字節用集天正十八年本節用集饅頭屋本節用集易林本節用集運歩色葉集などではツブと成り居り、現在ではツブをツボと訛る人もある位である。要するにツビがツブとなり、さらに一部ではツボと訛しても居るのである。此の私記ではヒの假名として比字を使用するのが普通であり、他の假名としてはクビを久鼻と書く一例あるのみだのに、こゝに粒に限りて都飛〈二度〉都非と變つた字を書いて居り、此の飛非ともに乙類であるのを見ると、ツビのビは乙類假名であつたと見られる。