五七 翳瞙(一七)

○五七 翳×(一七)  上音、訓弊也、下音莫、訓末氣マケ、云目暗也(×は〈旁莫/篇目〉
目暗也の下に不告勞云々とあるが、これは翳×に關係なき別の語である。翳の音は願經四分律古點江伊反承暦三年の金光明最勝王經音義衣伊反、可九留、とあり、亞はエの音を示すのである。二四參照。弊は蔽と改む可きだ。末字未に作るが誤字だから意改した。さて此の語慧苑に無い。このマケは一二八にも、「醫× 上或本爲㆓翳字㆒、音亞、訓弊也、下音莫、訓麻氣也」とあり、(此の醫字、これでは誤である、酉の代りに目字を書く可きである、弊も蔽が正しい)新撰字鏡に生の下に目を書いた字、二ノ七オ一麻介、又目篇に毛を書いた字二ノ七オ七目之力精也、目保乃〻〻志、又麻介、又目暗と訓註して居る、メホノボノシは、はつきり見えない事だらうから目之力精也では、反對の義に成る。康熈字典には目少精也、一曰不明貌とある。字鏡は誤である。和名抄にマケの語は見えないが、目翳俗云比と註して居る、其の病状は目膚翳、眼精上有㆑物如㆓蠅翅㆒是也であり、國語は比(即ちソコヒのヒ)であるが、別に、清盲阿岐之比と訓んで居る、アキジヒならば外見上普通と變りなきアキメクラの義である。三卷字類抄にもマケあり、名義抄にも見える。其の名義抄は新撰字鏡がマケと訓んで居る×字〈生の下に目を書く〉アキジヒと訓んで居る佛中七二ノ三とにかくマケは一種の眼病で視力の衰へ又は見えなくなつたものを云ふが、醫學的な事は知らぬ。マケのマは目、ケは、脚の病をアシノケ和名抄と云ふのと同じであらう。ケは字音語とすれば此の假名で可いが、國語とすると當否不明。石山寺大智度論第一種點に、膚翳マケ