一六五 舟楫(七七)

○一六五 舟楫(七七)  ‥‥楫倭言加伊カイ、‥‥櫂‥‥倭言加地カヂ
慧苑、音義私記にも見えるが私記は慧苑に據つたもので、大治本とは異る。さて此のところ、活字にはありさうも無い字が多いので、字を普通のに改め註も省略した。カイもカヂも同じ物で、水を掻き遣りて舟を進めるもの、此のカヂは船尾にある舵の事では無い。舵の事は記倭建御子の條に、當藝斯、和名抄には訛形で太以之とある。さてカイ・カヂの兩方とも萬葉に假名書がある。カヂの語原は不詳だが、カイは恐らく掻キ(水ヲ掻キヤル義)の音便形であらう。