• ○問、ムハラコキ如何、答、ムバラ〈ハ〉草也、コキ〈ハ〉クキ〈ヲ〉コキ〈ト〉イヒナセリ、春ムバラヨリタチアガルワカタチ〈ノ〉名也、莖也〈十帖〉 國語辭典に「茨の若枝なりと」とある。
  • ○次、シルキ道ノムマサグリ如何、コレ〈ハ〉イヅク〈ヲカ〉フムベキト、馬ガウラモイテ、アヤブミサグレハ馬搜ナルベキ歟〈十帖〉 國語辭典はウマザクリとして擧げ馬蹄痕とし、又「馬の蹄にて蹴立つること」と解して居るが、名語記の解を參照すると――馬探りの解は問題で無いが――事は泥濘に關するものと見られる。
  • ○メオトコノメ如何……女人〈ニ〉上中下〈ノ〉シナアリ、上ヲバ御前、中ヲバナニノマヘ、ソレヨリ下ヲバ、ナニマヘ、堅固〈ノ〉下臈ヲバ、ナニメトイヘリ、ミナマヘノ義也、マへ〈ヲ〉反セバ、メ〈ト〉イハルヽ故也〈二帖〉 ナニノマヘとナニマヘとの區別は興味がある。御前を何と訓むかを云つて居ないのは遺憾である。
  • ○コノミ若〈ハ〉イチゴ〈ナドヲ〉モル如何、ミトレル〈ノ〉反ハモル〈ト〉ナル也、又云、實ル〈ヲ〉モル〈ト〉イヘルスヂモアリ、ル〈ハ〉徳ヲアラハス義也〈六帖〉 此のモルは盛るか、モギ取るかの何れかであらうが、ミトレルは實取レルであらうから、やはりモギ取る方であらう。此の意味のモルは國語學界で近頃問題とせられ出した氣味があるが〈奧里將建氏「毛利喫考」(國語史の方言的研究收載)〉此の用例の如きは古い用例として注意すべきである。因みに、妙玄寺義門も、友鏡底廼影の中で「もる  漏ノ類、又果實ナドヲボク事、さや〳〵さうしアシ、ホボ四ヘン雜話ニ」と記して居る。活語雜話第四編に説くと云ふ事だが、雜話四編は未刊行で又未完成であつたやうだ。
  • メナラハ如何、女童也、メノワラハ也、ノワ反セバナ也、サテメナラハトイハルヽ也〈九帖〉 斯う云ふ解釋ばかりならば結構なのである。