2008-07-13から1日間の記事一覧

擬聲語、擬態語にも、今のと異りて珍しく見えるものが多い。 ○ズハエヤ竹ヤノノヱ〳〵トアル〈ト〉イヘルノエ如何、答、ノエハナヲイケ〈ノ〉反、直氣也、ナヲヤク〈ノ〉反〈ハ〉ノユ也〈三帖〉 ノヱ〳〵は此の直氣の解釋によると、眞直である事を意味するら…

○頭ニカヅクヨボシ如何、烏帽子トカケリ……〈七帖〉 此の語九帖ではエボウシとしても擧げて居る。エノミ(榎の實)がヨノミと成つたと同じ轉訛である。 ○夏〈ナド〉クルシガル人〈ノ〉ヨダル〈ヤト〉イヘル如何〈七帖〉 國語辭典は「彌怠」の義として擧げて居…

○問、ムハラコキ如何、答、ムバラ〈ハ〉草也、コキ〈ハ〉クキ〈ヲ〉コキ〈ト〉イヒナセリ、春ムバラヨリタチアガルワカタチ〈ノ〉名也、莖也〈十帖〉 國語辭典に「茨の若枝なりと」とある。 ○次、シルキ道ノムマサグリ如何、コレ〈ハ〉イヅク〈ヲカ〉フムベ…

○人〈ヲ〉コソグル時、ヘコソ〳〵トイヘルヘ如何〈二帖〉 ○次、指南モシハ祇承〈ノ〉義〈ニ〉ヨセテシルベ〈ト〉イヘルベ如何、ホテ〈ヲ〉反セバヘ也、ホテ〈トハ〉物〈ヲ〉點定〈ス〉ル所ニタツ 又旅ノ道〈ヲ〉ユクニ、サガリタル朋友ニミセムトテタツルシ…

○人ノイフ事〈ヲ〉キカズシテ、ツヽラ〈ト〉アリトイヘル如何、コレハツク〳〵ラカノ反〈七帖〉 目の状態に關するツヾラカと云ふ語は靈異記や新撰字鏡に見え、又ツヾラメは世尊寺眞本字鏡、類聚名義抄、字鏡集にも見えるが、ツヽラは見えない。ツヽラカ・ツ…

○次、シコチカラ如何、セイコロ反リテシコ也、ヲノカ勢比〈ニ〉アヒタル程ノチカラ也〈十帖〉 ○次、田舍ニ官物呵責〈ノ〉時、セリ徴符トイフ事アリ、勝徴符トカキアヒタリ、義如何、スグレル反リテスリナリ、スリヲセリトイヒナセル〈ニ〉アタレリ〈十帖〉 ○…

○商人〈カ〉物イレテニナフカチコ如何、陸龍ナルベシ、又カタヽリ籠歟、カタツリ籠歟〈七帖〉 ○物ヌフニカヌフ如何……堅縫也〈七帖〉 ○ヰノシヽノカクナルカルモ如何、橧〈ト〉ツクレリ……本葉ナドヲアツメテ中〈ニ〉イリ〈テ〉フスナル也〈七帖〉 カルモは珍…

○イヌオモノ「イヌ〈ハ〉犬也、オモノ〈ハ〉追物也」〈十帖〉 今日では文字に縋りてイヌオフモノと云つて居るがイヌオイモノと云うた時代もある〈運歩色葉集〉 ○問、下臈ノアラオカナ〈ト〉イヘル何事ニカ如何、コレ〈ハ〉ヲカシノ義也、オモカラナヤノ反歟…

名語記の語原解釋は、本書の出來た時代が時代であるから、既述の通りに、大體學術的價値は乏しいので、語原辭書としての名語記は、歴史的價値を有するのみであると云ふ他は無いのだが、本書中には珍しい言葉が夥しく見えて居る點に本書の大きな價値がある。 …

鎌倉期の語原辭書名語記十帖に就いて(下) : 名語記所見の鎌倉時代語

岡田希雄 國語・國文 5(13): 69-103 (1935)