2007-09-30から1日間の記事一覧

虎の語原に關する私のおほけなき妄論は是れで盡きる。要するに「トラと云ふ日本語は、日本人が案出した純粹の日本語であるか何うかは判らない。假りに外來的なものとすると、古代朝鮮語と關係あるのではあるまいか。しかし虎を意味する朝鮮古語は不明である…

かくて私は「靈の朝鮮古語が、tar 又は tor であつた」と假定して、こゝに日本語のトラと、tar 又は tor と結びつけようとするのである。しかして其の理由は、既でに讀者も氣づかれたであらうが、虎が靈力ある畏{かしこ}き獸として恐れられて居た事を出發…

高麗史卷五十七地理誌(二五四頁。三國史記卷三十六、地理志三の四頁は高麗史に比し簡であり役にたたぬ)に、百濟{クダラ}の馬突縣――馬珍とも、馬等良とも書く――が新羅に屬して以來、新羅{シラギ}の景徳王(我が聖武・光謙・淳仁三朝に相當する時分の王…

現在の朝鮮語では、 神 sin(神の字音) kui-sin(鬼神の字音) thyön-sin(天神の字音、hはアスピレートを示す) 鬼 kui-sin(鬼神の字音) 魂 hün(字音である、母韻は第九母韻) 靈魂 hon-ryöng(魂靈の字音) 靈 sin-ryöng(神靈の字音) の如きは、皆字…

さて、右の如くに廣く檢して見ても、トラと似た形のものとては見あたらず、t の音を有するものゝ中、tiger と成るやうな類のものでは無くして、a・u・o の如き母韻を伴ふものを求めると、 滿洲語の tas-ha 系統のもの オロチョン語の duse 支那梵語の於菟・…

韓國の虎ちふ神 二 : 虎の崇拜と虎の語原

岡田希雄 『ドルメン』2(9); 5-1 (1933)